ここまの心




11月3日


朝から小雨がぽつぽつと・・・。
こらァ、大丈夫かなぁと思いながら、旗日限定・福袋の会をお手伝いしていたところ、志ん太兄からTel。

「・・・あぁ、やっぱり中止ですか。」

今日は浅草で、『東京時代祭り』なるイベントが予定されておりました。
京都の時代祭りは大変に有名ですが、それの東京版ってところでしょうかね。
歴史的な衣装を身に着けた行列が、秋の浅草を練り歩くという、大変に風情のある行事です。
その中でも、特に観衆の目を引くのが、松葉屋の花魁道中。

かつて、浅草寺の裏っ手に、吉の原という、大変に結構なところがございまして――
廓噺でもお馴染みの、吉原の大店、松葉屋さん。
「親の命日は忘れても、この日だけは忘れねぇ。」
昭和33年3月31日、赤線廃止と共に、事実上、『廓〔くるわ〕』はこの地球上から消えてしまいました、が。
そんなことではへこたれないのがこの世界。
今度は、現存しない“物珍しさ”を売り物に、花魁道中を再現。
はとバスツアー「夜のお江戸コース」なんぞにも組み込まれたぐらい。
しかし惜しいかな、この不況と相まって、松葉屋さんでの花魁ショーも数年前に無くなってしまいました。

でも、まったくやらないわけじゃァ、ありませんで。
時々、お祭りなどでお呼びが掛かり、この松葉屋さんご一行でお出ましになることも。


えェ、突然ですが、古今亭志ん橋師匠、「よくお坊さんに間違われる」方と言えばすぐ分かるでしょうか?
あの師匠のおカミさんが、以前に松葉屋さんで太夫を務めていたんです。
早い話が、「花魁のおカミさん」なんですなぁ。
もちろん、お客を取っていたわけじゃありませんが・・・(^_^;)ゞ

そんなもんで、その弟子の志ん太兄さんと一緒に、花魁道中のお手伝いをさせてもらったことが以前にもあります。
花魁、新造、牛太郎(若い衆)、それに松葉屋・女将の福田利子さんの一行で、
仙台駅前のデパートのイベントに行ったっけなぁ。
花魁道中一行が新幹線から降りてくるところなんざ、いい形でしたよぉ!
そん時は、『松葉屋』の提灯持ちの若い衆を務めました。


あれ以来の、久々のお声が掛かり、楽しみにしていた矢先のこの雨天・・・
オモテの仕事は、天候に左右されますからなぁ。
女心と秋の空。
え? いつも惑わされっぱなしだって??
ご、ご冗談を・・・(汗)



11月19日


昼間、某医療系の短大にて、特別講師を務めてまいりました。
・・・と言っても、「一席、お笑いを申し上げます」ですがね。

昨今、健康に対して「お笑い」の与える効果というものが、色々と注目されています。
「笑い」というのは、心も体も健全であればこそ、受け止められるもので。
今まさに苦しんでいる、というような人に、「笑う」余裕なぞないでしょ。

あるいは、苦悩の底にある時、「笑い」によって救われることもあります。
「笑い」の持つ力、それを医療面において活用してみよう、というのが今回の目的で。

『看護ケア』という授業の一環で、笑うことによって心身にどのような影響を与えるのか、
それを学生自身に体験してもらおう、という先生からのご依頼。
まぁ、早い話が「笑わしてくれ」ってなモンです。

が・・・。相手は二十歳前後の看護学生。しかも99%は女子。
彼女たちを相手に落語を一席、というのはなかなかどうして一筋縄には行きませんですなぁ。
おそらく生で落語を聞くなんてのはほとんどの学生が初めてだろうし。
それに、自らの意思で噺を聞きに来たわけでもないから、まずは興味を持ってもらうことから始めてェ〜

色々マクラを振ってみて、選んだネタが『家見舞』。
今、改めて考えてみて、何でこの噺を選んだろうって。
女子大生相手に、『家見舞』。違うだろ。明らかにネタ選び、失敗してるだろって。
あんなにサゲの通じなかった高座も初めてですよ。
もうね、メチャクチャ後悔っす。
激しく鬱ですよ、マジでさ。

授業が終わったら、学生連中(99%女子)と仲良くぶっちゃけトーク、なんて野望も、
その余裕のかけらすら残っておりませんでした。

久し振りに失意のどん底。
そう、こんな時には、「笑い」によって心をケアするのです。
じゃァ、手前ェの落語のテープを聞いて・・・、うがぁ〜!ますます鬱になるぅ〜?!


p.s.
夜、時蔵師の会でウケたから、結局±ゼロでチャラになったのさ。
これでいつも通り、かな?



11月30日


『コンピュータウイルスに犯されて、更新出来ませんでした。』
(お約束の言い訳)


私は夢を見ていたのだ。
だって、思い出してみるに、今日一日の記憶が所々途切れているんだもん。
何かに憑かれているような気がしてしょうがない。
せっかくあの後、川崎大師に行ってきたのに、お参りもせずに帰ってきてしまった。

玉子酒、か。名作『鰍沢』も、元はと云えば三題噺だったんだ。
後世に残る噺もあれば、その場限りの噺もある。
人生なんて、所詮そんなもん。
その時、楽しければそれでいいじゃないか。

どうやら、今晩は呑み過ぎたようだ。
夢にならないうちに、蒲団に入るとするか。


                       あとがき「ダメダメ落語はすぐ忘れろ」小駒著





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