銭湯体制につけ!


新潟・燕温泉特集 Part1
2002年5月29日〜6月6日


「旅」、それは日常生活からの脱出。
「旅」、どこか見知らぬ土地への好奇心。
「旅」、芸人にとってはただ往復に時間のかかる仕事先。

時は2002年の梅雨入り前、最高に気分の良いこの時期に旅の仕事が入った。
我々芸人にとって「旅」とは、一般的に“泊り”の仕事を指す。
市民会館とビジネスホテルしか知らない旅もあれば、出掛けた“ついで”に仕事をする旅もあったりする。
今回は、“ついで”のほうに近い旅。

事の発端は、兄弟子・馬遊からの電話。
「小駒さァ、まったくタロ(=ギャラ)にはならないんだけど、三食付いて温泉入り放題、
酒飲み放題の旅の仕事があるんだ。ヒマな時に行ってみる?
一週間から十日行って、足代プラス小遣い稼ぎにしかならないんだ。
ただ、一人っきりだから、好きなように出来るぜ。稽古がてらによかったらどうかな?」
お、温泉?!行きます、行きますって!!そんなキーワードを出されて黙っていられるかッてんだ!
聞けば、温泉宿のオーナーにご贔屓いただいて、時々お邪魔しては落語会を開催させてもらっているらしい。
すぐに手帳を開く。
う〜ん、我ながらヒマなもんだ。一週間、何の予定も入っていない「白紙」ページがすぐに見つかる。
「大丈夫です。ぜひ、行かして下さい!!」
「新潟なんだけど。燕温泉ってとこ。詳しいことはまた後で連絡するから。」

新潟・・・、つばめ・・・、あぁ、そういえば燕三条って駅があったなぁ。
地図を広げて探し出す。――ありゃ、遠いッ!
新幹線かぁ。足代、結構掛かりそうだなァ・・・。でも、ここって温泉出るのかい?山が見当たらないんだけど。

こういうのは、ネットで調べりゃいいんだよな。
『燕温泉』、で検索、と。
――んん?どこココ?燕三条じゃないぞ。・・・妙高?それって、赤倉のスキー場のほうかい?
再び、地図とにらめっこ。
あった、あった!こんなところに温泉マークが並んでるぜ!オイラをムラムラッ!とさせる記号が。
・・・うーん、どうやって行くんだ?「妙高高原」??信越線?長野新幹線リレー号?
そうか、長野から入って行きゃァいいんだな。
・・・ってことは、電車よりバイクで行ったほうが遊べるぞ!

まず、「楽しみ」を探すことが最優先。
地図を見ながら、どこに寄り道をするか、何を食べようか、なんてことに想いをめぐらす。
温泉宿での落語会は5月30日から6月5日まで。うまいことに前後1日、空いてるんだ。
ノンビリと旅を楽しもうじゃないか。


今回は「ツーリング」&「温泉」&「美味いもの」の三点セットで攻めてみたいと思います。
足代を浮かすために、かつ、土地の風景を楽しむために、高速はなるべく使わないように計画。
余裕を持って、疲れ知らずで、前日に山梨入りを決行しました。


2002年5月29日

朝イチで出発・・・のつもりが、のんびり準備をしてたら昼を過ぎてしまった。
「旅」はどれだけ荷物を少なく出来るか。オイラは常にこのテーマに立ち向かっております。
持ち物――着物。これがないと仕事にならない。
着替え。1日分のみ。洗濯して交互に着れば一週間でも十日でも耐えられる。
地図。全てはこれに懸かってます。方向音痴をどれだけ克服できるか。
ネタ帳。ヒマを見つけて稽古をしようってんですよ!
以上。・・・って、これだけ?!後はどうにでもなる。同じ日本なんだから。

午後1時40分、中野区上高田の自宅を出発。これのどこが朝イチなんだ?
早稲田通り、環七、甲州街道、これだけ。これなら迷いようがない。後はひたすら甲州を目指すだけ。
1時間経過。府中、立川の辺りか。
そうです、今回も相棒はセローです。いつだって、噺家とカモシカさ!
セローの欠点、その1。ケツが痛くなる。
オフロードだからしょうがないんだけどさ。もうこの辺りでケツが痺れはじめた。

八王子に差し掛かる。ここからは高尾の山越え。クネクネ山道をのんびりと走っていては日が暮れてしまうかも。
そろそろ下道も満喫したので(もう?)、高速に乗ろ〜ッと。
中央道・八王子IC〜勝沼ICまで。山越えは一気にパス!

何度も書くが、セローはオフロードバイク。タイヤもオフロード。エンジンは225cc。
道路交通法では、125cc以上は高速道路が通行可。
225ccあれば、十分・・・・・じゃない!!!
もう、大変っす。80kmを超えると、車体全体がブルブル震える。
100kmオーバーでは、いつエンジンが飛び去るか知れたもんじゃない。
ちなみにメーターは140km/hまで書いてあります。もちろん、オドシの数字。後ろから押したって、ムリ。
そんなバイクで、走行車線の流れに乗ろうってんだから、何度スロットルを握り直したことか。
しかも、カウルも風防も何にも付いてないから、100km+αの風が直撃。ものすごい形相。
バイクウェア着てってよかった。

無事、勝沼で降りる。
ここからは、旧甲州街道に入って、桃とぶどうの畑の間をノンビリ抜けながら甲州を満喫。
目指すは、石和の先にある『ほったらかし温泉・中心の湯』
ここはすごい。まずはひたすら“フルーツライン”と名付けられたブドウ畑の農道を登ってゆく。
きれいに整備されて、まったくといっていいほど車が走っていないので、気分良く走れます。
“フルーツ公園”の園内も突っ切って、ひたすら山登り。
去年、ここに行った時には、頂上あと300mくらいが未舗装で、かなりのガレ場(砂利で荒れた道)。
オフロードが大活躍!と思ったら、いつの間にやら舗装されてすんなりと目的地へ。

ステキ過ぎます。ほったらかし温泉。
ただひたすら湯に浸かって、遠くの山々、下に見下ろす春日居の町並み、かすむ富士山を眺めながら放心状態。
放心状態から覚めたのが1時間後。もう、日も落ちてから撮影しました。しかも霞んでて何だか分からない。
本当は、富士山も拝められます。・・・って、どこに写ってるんだい?

再び、甲州街道へ。
そろそろ、空腹も250%、バイクもオイラもガス欠寸前。
甲府の先、双葉バイパス脇の『小作』 へ。
甲州名物、ほうとうです。
名物に美味いものなし、とよく云うが、ほうとうはウマい。大好物。
平ったいうどん、カボチャや山菜、味噌仕立て。これを鍋でいっぺんに煮て、そのまま出す。
かなりの量。これで1,100円だったかな。ちょっと値上がりしてました。

温泉に入って、腹も満たされ、そろそろ疲れも出てくるころ。
八ヶ岳で前日の日程は終了。
明日こそは朝イチで、新潟入りするぜ!

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